丸世の酒造り

創業より受け継がれる伝統製法
「もち米四段仕込」の日本酒

わたしたちの酒造りにおける最たる特徴は「もち米四段仕込」です。一般的に酒造りは、「一麹、二酛、三造り」との言葉の通り、まず麹と酒母(酛)を製造し、「三造り」で酛・麹・蒸し米・水を4日間〝3回〟に分けて加え、もろみを仕込みます。これがいわゆる「三段仕込」といわれるものです。もち米四段仕込では、三段仕込みのあと、4回目として蒸したもち米を加えます。戦前まで多くの酒蔵が行ってきた日本古来の醸造方法ですが、現在、長野県では丸世酒造店のみ、全国でも数蔵が取り組むのみとなりました。
もち米を使用することで生まれるコクのある味わい、飽きない酒質は、ほかにかえ難い個性です。そこに惚れ込み、今も伝統の製法を受け継いで通常商品すべてをもち米四段仕込で造っています。

理想はほんのり甘みを感じる辛口
その先のさらなる高みを目指して

もち米というと甘い酒をイメージする人も多いですが、かつて4代目康久が理想の酒として「舌先でほんのり甘みを感じる辛口」と語ったように、わたしたちの基本は辛口の酒。味わいの中心にもち米の旨みやコクがあって骨格がしっかりとしているので、冷やのみならず燗をつけてもおいしくいただけます。その特徴から、とくに寒い地方で多く取り組まれてきた醸造方法でもあります。
かつてはもち米を甘酒にしてからもろみに入れていましたが、平成18(2006)年から蒸したて熱々のもち米を入れるようになりました。もろみの温度が高くなることで酵母が再び活動をはじめ、さらなる発酵を促し、より複雑な味わいが生まれるのです。その分、温度管理など高い技術も必要になりますが、より個性のある旨い酒を求めての変革でした。

高冷地の涼風が育む
健全な契約栽培米

用いる酒造好適米は「ひとごこち」「金紋錦」「山恵錦」という、いずれも長野県で生まれた品種です。丸世らしさをより体現してくれるひとごこち、醸造が難しいものの旨みと個性のある味わいが特徴の金紋錦、磨きやすく安定した酒質を実現しやすい山恵錦と、それぞれ個性の異なる酒米です。栽培するのは地元・中野市や北に隣接する信濃町などの契約農家。もち米も、信濃町で栽培される長野県の奨励品種「ヒメノモチ」を用いています。
温暖化による栽培条件の変化はめまぐるしいものがありますが、標高約400mから800mほどに位置するこれらの地域では、涼風が田を吹き抜け、病気も少なく健全な米を育てることができています。

志賀高原の雪溶け水を
信大クリスタル®︎で理想の水に

仕込み水は志賀高原の雪溶け水を井戸で汲み上げ、さらに「信大クリスタル®︎」によって濾過した水です。信大クリスタル®は信州大学の研究で生み出された機能性無機結晶の先鋭材料のことで、この材料を用いて水を濾過することで、特定の物質のみを除去することができるのです。
わたしたちが用いる井戸水は、もともと酒造りに向いたミネラルが多い硬水ですが、たとえば鉄分があると酒が酸化しやすいなどのデメリットもあります。しかし、通常の浄水器で濾過すると鉄分以外の有用な成分まで除去してしまい、個性のない水になってしまいます。その点、信大クリスタル®︎を導入することで残したい成分と除去したい成分を細かに設定することができるようになり、理想の水、理想の酒にまた一歩近づくことができました。